2026年4月15日
本質は米国への従属
日米首脳会談で「日本がアラスカ原油を調達できるようにする」との合意を得たと報道されました。今日はこの話の裏側をお話しいたします。
イラン攻撃によるホルムズ海峡閉鎖を受けて、アラスカ原油は日本の原油調達先を増やす手段となるため、マスコミは高市首相の「快挙」として扱っています。
しかも、図表1にあるように、アラスカ原油は中東原油よりも輸入に要する日数が8日ほど短いメリットをもっていることも強調されています。

・中東からの場合:20日(約12,000km)
・アラスカからの場合:12日(約6,000km)
ところが、こうした報道は本質隠しに過ぎません。アラスカ原油調達の本質は米国への従属です。その理由を明確にしましましょう。
➊開発費は日本側が負担
現在アラスカでは、ウィロー・プロジェクトという巨大油田開発事業が進められています。アメリカ西海岸の産業を支えていたプルドーベイ油田が枯れ始めているためです。図表2からも分かるように、アラスカ全体の原油生産量はピーク時の200万バレル(約3.2億リットル)からみれば、現在は約20%です。

2018年から本格的に計画されたプロジェクトですが、環境団体の訴訟で一度計画は頓挫しました。規模を縮小して再稼働しましたが、まだインフラの整備段階です。事業計画書には2029年から採掘予定と明記されています。
そこで、アメリカに恩を売りたい日本政府は、このインフラ整備に投資することを申し出た可能性が高いです。
しかし、当プロジェクトにおいて向こう3年以上は原油が出てくる見込みはありません。もし予定よりも採掘量が少ない場合は、当然日本へは回って来ません。一般に、大油田が発見されることは稀有なのです。リスクと金は日本が負担し、アメリカが利益を享受する構図です。
❷輸送費が馬鹿高い
輸送費にも問題があります。米国の船・船員を用いなければならないからです。ジョーンズ法が根拠です。この法律は1920年の制定から100年以上も米国湾内の海上輸送を厳しく制限しています。具体的には「米国内の港どうしで輸送を行う場合、米国の旗が立ち、米国船員の乗った船を使うこと」を義務づけた法です。他国と比べてみると、平均して約2.7倍の費用がかかります。図表3に記しました。

アラスカ(バルディーズ港)から日本への直接ルートが選ばれれば、ジョーンズ法は介入しません。問題は、米国本土の港を一度でも経由した瞬間、その区間はジョーンズ法の対象となることです。
最短距離なのですから、直通ルートを選ぶのが常識的ですし最適解です。普通なら絶対に選ばない愚策ですが、この悪条件を同盟の証として飲み込むことになります。WBS(テレビ東京のワールド・ビジネス・サテライト)の報道では、「米国の船・船員を用いる」ことが必要との簡単な解説がなされていました。
実際、1996年にもアラスカ原油の輸出は行われましたが、2000年には完全にストップしてしまいました。コストが割高だったからでしょう。
❸原油調達先の多様化にならない
最後に採掘できる量が圧倒的に少ないです。現状、中東から日本へは毎日約230万バレル(約3.7億リットル)の原油が輸入されています。これに対して、投資によって増産されるアラスカ原油は、最大18万バレル(0.3億リットル)という予想です。中東原油の8%に過ぎません。
油田開発のインフラ整備を負担させられ、高い輸送費を払わされ、原油輸入量はほとんど増えない。日本が米国に媚びを売っているとしかいいようがありません。このようにして日本の富は米国に吸い取られていきます。



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