今、本当に人手不足なのか。

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賃上げを実現しようとする政治的な動きの裏に

人手不足が叫ばれて久しいです。マスコミは何かと「人手不足だから」と理由をあげますが、人手不足について具体的なことをあまり公表していません。今日は、この問題を正面から取り上げてみましょう。

図表1は有効求人倍率を示したものです。有効求人倍率とは求職者1人に対して何人分の求人があるかを示す数字のことです。詳しくは、「仕事の数」を「仕事を探している人の人数」で割って求めます。基準は1.0で、上回れば人材の需要が高いことを表します。例えば1.5であれば、1人当たり1.5の仕事があり、0.8であれば、1人当たりの仕事の数が0.8しかないことになります。この数字が大きいほど、人手不足感が高く、世の中に仕事が有り余っていることになります。

ここで、有効求人倍率がどのように推移してきたのをしてきたかを見てみましょう。1980年から見ると、1990年初頭に大きな山があります。これは日経平均が3万9000円をつけた大バブル期でした。その後は景気の悪化とともに、有効求人倍率は下がりました。1997年~8年の金融危機を経て、この数値は下がり続け、1999年には0.5未満となってしまいました。

リーマン・ショック前の超金融緩和期には1倍強となりましたが、リーマン・ショックが訪れると、過去最低の、約0.4にまで落ち込んでしまいました。この時日経平均は7,000円台となりました。

その後、日経平均が持ち直して2万円台になって、有効求人倍率も過去最高の1.6にまで上がったのです。それはコロナ発生前のことでした。しかしコロナ禍に入ると、有効求人倍率は一気に落ちました。そしてアフター・コロナへ移行すると、やや回復し、現状は1.3レベルになっています。

現状の1.3は、過去の平均からすればかなり高いレベルであることに間違いありません。しかし、コロナ前の人手不足感に比べれば、落ち着いた状況にあると言えます。しかしマスコミは、「人手が非常に足りない状況にある」と煽っているような感があります。これは短期的には、賃上げに関して高い水準を目指す動きとなり、労働者にとって有利に働きます。

しかし、長期的な狙いは、できるだけ人力を割かない方向へと社会の仕組みや、世論を変え、効率化、省力化を徹底しようという動きなのです。これから大きな不況が来たとしても、この流れは変わることはありません。

そうした流れの中で、手に職のない一般労働者は、失業や不本意な人事異動に見舞われていくことになるでしょう。そうした方向性が、現在の有効求人倍率に表れていると考えてください。

コメント

コメント一覧 (8件)

  • 5~10年もすれば、世の多くの仕事がAIやロボットに置き換わっていきますね。人余りの時代がやってきます。

  •  本当に面白い目からウロコです。マスコミに踊らされたと思いました。
     もう少し経つと大暴落で人余りと騒ぎ、外国人の働く場所か無いとマスコミが、企業を批判する世の中になりそうですね。

  • マスコミの言う事はあてに成りませんね?
    AIに仕事を奪われる時が、すぐそこ迄来ている様に思えます。
    そうなったら、人余りです!
    人手不足を声高に言って、日本に外人の流入を加速させたいのでしょうか?
    これ以上外人が増え、住み着けば、日本が日本で無くなって仕舞ます。たかちゃん

  • 就職する者にとっては有効求人倍率は大変気になる数値だと思いますが、こんなに変動するのですね。

  • 有効求人倍率表とは、政治的な賃上げや長期的な社会の仕組そして方向性を、数値化したものなので投資家や家庭の経済を預かる方がたも参考になるものなので若年層から高齢者まで目にとまれば生活保護のような制度利用者も少なくなるのではと思いますこの表の事を子供達に話してあげようと思います

  • 人が足りないと騒がれていても、求人情報をみると、ちっとも賃金が上がっていなくて、「安い労働力が足りないってこと?」と思ってしまいました。
    その中でトヨタなどはしっかりベースアップし、格差拡大を感じます。

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