コメ価格59%増はどうして生じたか

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小さな需給の変化が大きな価格変化に

コメ価格は前年比で59%上昇しています。どうしてこのような大幅な上昇になっているのか、この理由を探ることで、商品価格の値動きについて、解説いたします。

最新の物価統計によれば、2024年10月はコメ価格が前年比59%の上昇となっています。9月の時点では45%の上昇でしたから、上昇幅がさらに拡大しています。

コメやその他の商品価格は需給で決まります。まず、供給面(生産量)を見ていきましょう。図表1です。

図表1

水稲農家数が1965年時点では、約500万戸あったのですが、2020年では70万戸になっています。これに伴い、生産量の減少も著しいです。

この理由として挙げられているのが、農家の老齢化です。「年を取るにつれ米作ができなくなった」というのが、よく聞く理由ですが、本当の理由は、「コメが儲からない」からです。儲かれば、誰かが後を継ぎます。

コメが儲からない事情は図表2にあります。

図表2

これは1990年からのコメとパンの価格を記したものです。1990年を1としています。コメ(青線)は、2016年あたりまで、途中のでこぼこはあるものの、基調として、価格下落が続いてきたのがわかります。消費者のコメ離れが進んできたからです。これに対して、パン(赤線)は上昇基調です。

消費者が食べないものを作っても、農家は儲かりませんからコメを作る人が減ってしまったというのが本当の理由です。

ここで、需要を見てみましょう。明確な統計があるわけではありませんが、パンが高過ぎとなっており、需要のシフトが起きているようです。このため、2024年に入ってパン価格が若干の値下がりになっています。

もう少し具体的に見てみましょう。コメとパンの価格差は2016年頃から大きくなり、2021年のパン価格高騰開始を受けてさらに広がり始めました。日本人はパンが好きなのですが、パン価格がここまで上がってくると消費は安い方に向かい始めました。その結果、今までかなり広がってきたパンとコメの価格差が2024年に入り、一気に縮まってしまいました。

それでも、需要シフトは小さなレベルのものです。日本の人口減が続いている中、コメ消費の下降トレンドは続いているからです。タピオカで一時起きた大ブームのようなことがコメに起きているわけでもありません。

ここまでの話をまとめてみますと、「コメの生産量減少が続いている中、パンからの小さな需要シフトによって、価格が過去最大の上昇を示した」ということになります。

これが商品価格の値動きの特徴です。需給の小さな変化でも、価格に大きな影響があるということです。

ぼくは皆さんにゴールドを買うように薦めています。ドルや円という先進国通貨の価値が疑われるような時代が来れば、金への需要シフトが今以上に大きくなると思われます。そのシフトが仮にそれほど大きくないものだとしても、価格にはこのように大きなインパクトが生まれます。

そうしたことを今回のコメ価格高騰から読み取っていただければ幸いです。

コメント

コメント一覧 (11件)

  •  円や米ドルなど貨幣の信頼が揺らぐことにより、ゴールドの価値が再確認され、高騰する世界が近いように感じます。
     
     話は変わりますが、、
     今日、日経225が一時、久しぶりに40,000円を超えました。

     他方、国民民主党の選挙公約であった30年間動かなかった103万円の壁の撤廃、50年間動かなかった暫定税率の廃止などが、与党と合意されました。
     始めて、政策で与党と勝負して初めて勝った野党とネットでは賞賛されてます。
     立憲など、森かけなどの、与党の粗探しばかりして野党に期待できなかったが、これからは若い人が選挙に行くことにより、国民にとって良い政治になるわかったと言う意味で大きいと思います。

     暫定税率の廃止によりガソリン代が少しでも安くなり、所得が増えて消費に周ることによる日本経済の景気のアップへの期待が、本日の日経平均の株価でしょうか!

    • 石岡 様

       いつも興味深いコメントを頂きまして誠にありがとうございます。
       ゴ-ルドを海外に持ち出し保管することはには、いかがお考えでいらっしゃいますか?自宅保管の方が安全でしょうか?御指導を頂けましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

      • ライオン様

         私は、林先生の著書を見てから、金投資を始めましたので、金額もわずかですので、保管に悩むような量ではないのが正直なところです。
         

         

        • 石岡 様
           お忙しいなか、早速ご返信を頂きましてありがとうございました。先日拝見いたしました石岡様の自宅保管が最適解とのコメントはとてと興味深い解説でした。
           私は、今まで取引している貴金属業者や貸金庫を完全に信頼しておりました。三菱UFJ銀行の事件により、それは完全な誤りであったことに初めて気がつかされました。石岡様の鋭いコメントを拝見して自分の愚かさを痛感しました。
           石岡様の現時点でのお考えで結構です。もし、今後、保有量が多くなられたら、やはり、自宅保管がベストと予測されますか?

          • ライオン様

             銀行も政府も信用できないので、自分の自宅で、自分しか知らない場所が良いと思います。
             わたしは、金はわずかしかないので、悩むことは無いです。保有量が、多いと悩ましいです。火事とかありますから。

             お役に立てず申し訳ありません。

        • 石岡 様

           「自分だけしか知らない場所」は、素晴ら  しいご回答を頂きました。石岡様の賢明さを強く感じました。これから、この点を最重視していきます。
           三菱UFJ銀行事件の教訓として、本当に大切なものを守るためには、「自分だけしか知らない場所」が必要だと強く感じました。
           「大事なものは、ここにありますよ。」と強敵へメッセージを送るようなことは絶対してはいけないと思います。それをこの事件は、教えくれました。今後奪いに来るのは、行員だけでなく税務署ひょっとして外国の軍隊かもしれません。すぐに奪われてしまうでしょうから。
           今後「自分だけしか知らない場所」が複数見つけられると嬉しいです。

          • 金地金についても、自分だけしか知らない場所も、リスクありますよね?
            もし、自分が死んだらどうなるか、家族は気がつくのかのリスクです。

            また、最近は、スマホで株式とか運用してて、電話で注文しないので、家族も知らないケースがあります。特に、家族は故人のスマホのパスコードが解らず、故人の財産がどこまであるのか知らず、宙ぶらりんになったりと言うリスクもあります。

            全て、メリット、デメリットありますので一概に絶対のやり方はないですので、欧州の長い歴史にわたり富裕層が財産管理してる方法がいいんでしょうかね!
            林先生もご指摘されてますが、欧州の富裕層は、土地、金、美術品に1/3づつ、長年価値が永続するものに分けて、財産を継承してると聞いたことがあります。

            庶民のわたしには、悩まなくてすむ問題です。

            生意気なことを申し上げてすみませんが、金地金も含めて、財産保全のヒントになれたら幸いです。

        • 石岡 様
           
           年末のお忙しいなか度々御指導頂きまして誠にありがとうございました。
           石岡様の鋭い考察力には、いつも敬服いたします。「気がつかないリスク」には、充分注意を払い「極秘の場所」を複数探します。
           私は10年前の2015年に初め林則行先生の講演会に参加いたしました。内容の素晴らしいさと分かりやすさに感銘を受けました。
          当時は、欧州金融危機の真っ只中で私も強く不安を感じておりました。このような混迷を深める世界情勢なか生き延びていくためには林則行先生についていくしかないと確信しました。
          それからゴ-ルドのみを購入して参りました。
          林則行先生も95%の資産をゴ-ルドにされていらっしゃいます。私もそれに習っているところです。美術品や土地は「極秘の場所」に隠すことは難しいので奪われてる可能性が高いと考えております。いかがでしょうか?

    • 日経平均の問題は7月につけた高値をいまだに抜けていないことです。
      ニューヨークダウが新高値を更新しているのと対照的です。
      これは世界の投資家が日本に大きな期待をよせていないことの
      現れではないかと思っています。

      • 日経平均株価もそろそろ限界に来ているような気がします…。
        月足のMACDを見ますと下げに入ったような感じですね…。

        • 二番米国株価が新高値を更新する中、
          日経平均が7月の高値を抜いていません。
          これは日経平均がすでに天井を打っているというサインなのかもしれません。

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