2026年4月22日
米国の尻拭いでむしり取られる日本
米国・イスラエルが引き起こした中東情勢の混乱において、全く無関係のはずの日本が年間で約2700億円を払わされようとしています。
世界のエネルギーの生命線であるホルムズ海峡において、イランが通行料の徴収を本格化させているからです。今日はそのお話をします。
本来は無料の国際海峡に通行料が!
そもそも、国際海峡と呼ばれる航路は、どの国の船であっても無料で自由に通行できるのが世界の常識です。たとえば、日本の津軽海峡は国際海峡であり、仮に北朝鮮の船が通過したとしても、日本は一切文句を言うことはできませんし、通行料も取れません。
しかしながら、現在、イランは米国との恒久的な和平合意の前提条件として、ホルムズ海峡を通行する船舶に対して原油1バレルあたり1ドルの通行料を要求しています。
これは最終的には国際社会に承認(黙認)されるでしょう。永続化されます。その理由は何か?
イランがこれほど強硬に通行料を徴収する背景には、国家の限界を超える莫大な復興費用の重圧があります。図表1をご覧ください 。

イランの年間GDPは約4000億ドルですが、紛争による自国のインフラ等の復興費用の総額は、国家全体の経済規模を大きく上回る約5000億ドルと推計されています 。当然、自国の経済力だけで初期的かつ莫大な復興費用を賄うことは不可能です。他国の船から通行料という名目で資金を強制的に徴収するしかありません。
さらに、復興後の維持費だけでも毎年約250億ドルが必要になると見込まれています。図表2をご覧ください。1バレルあたり1ドルという通行料は、1日あたり約2000万バレルが通過するホルムズ海峡において、年間73億ドル(1.1兆円)の巨大な収入源となります。この通行料収入だけで、毎年必要な復興維持費の約3割を完璧に穴埋めする財源となっているのです。

日本が不利になる仕組みが用意される
年間73億ドルに上る世界全体の上納金のうち、日本が負担する額は約18億ドル、日本円にして年間約2700億円にも達すると試算されています。
日本からすれば、これはイランの暴挙です。しかし、国際世論は「イランを復興させよう」という流れになって来るはずです。イランを貧民国に落としてしまうと、破れかぶれになって何をするかわかりません。第一次大戦後のドイツへの莫大な賠償金がドイツを第二次大戦へと向かわせたと人々が考えているからです。
ここでいう「国際社会」とは、正直に言えば、米国のことです。米国としては、「自分が払わないならば、問題ない」と考えます。欧州各国も同調するでしょう。
しかも、海峡の有料化には「前例」があります。前例があれば、それに倣(なら)うことができます。前例とはトルコのボスポラス海峡の有料化です。
これは1936年のモントルー条約に遡ります。例外として衛生や灯台管理の名目でのみ、トルコに通行料の徴収を認めていました。
しかし2022年、トルコは自国のインフレを穴埋めするため、通行料を一気に約5倍に跳ね上げました。その後も値上げは繰り返され、わずか数年で6倍以上に膨れ上がっています。直近の2025年のレート(最初の約7倍超)で計算すると、年間収入は 3億ドル(約450億円)に迫る規模にまで膨れ上がっています。
イランは間違いなく、このトルコの成功体験を見ています。一度でも有料化を許容すれば、当事国の財政事情に合わせて際限なく値上げされます。これが通行料の恐ろしい現実です。
他国の戦争のツケを払わされる現実
日本の負担は通行料の2700億円だけにとどまりません。日本政府は4月15日、アジアにおけるサプライチェーンを強靭化するための新枠組み「POWERR Asia」を立ち上げ、100億ドル(約1兆6000億円)もの巨額な資金協力を表明せざるを得なくなりました。もちろん、米国からの命令です。
日本はイランと戦争をしたわけでも、国を潰したわけでもありません。それにもかかわらず、世界の宗主国である米国のやりたい放題の尻拭いを、日本が巨額の資金負担という形でさせられます。
ホルムズ海峡の通行料は今後も値上げを含めて常態化していく状況です。これは確実に原油輸入価格に転嫁され、最終的には私たちの生活費やエネルギーコストとして重くのしかかってきます。これが、他国の戦争のツケを払わされる残酷な現実です。



コメント
コメント一覧 (2件)
ホルムズ海峡の封鎖で米国のエネルギー産業は業績を上げていると聞きます。中国にはロシアがエネルギー資源の供給を申し出ているようですし…結局、儲かるのは米ロのような気がしています。
日本も、アラスカの油田開発に投資させられるより、ロシアと友好関係を回復すれば良いと思うのですが…。
日本政府は「量は確保した心配無用」と喧伝するが、値段については、当面のガソリン代しか言わず、すでに争奪戦が始まっている模様でインフレ必至。ゴールドも大型連休を控えて動き出すか。