2026年6月24日
排除されつつある海外製インゴット
近年、国内の主要な地金商(田中貴金属、三菱マテリアル等)や買取り専門店において、海外製金地金(LBMA公認銘柄含む)の買取りが大幅に制限・拒否されています。なぜか。理由は、脱税です。今日はこの話をします。
日本では金の購入に10%の消費税が課されます。その金を売る時に売り手側は10%の消費税の戻りを受け取ります。一方、海外では消費税が買いにも売りにも課されない国がたくさんあります。そのため、海外から密輸し、日本で売却すると10%の消費税分が儲かります。このように消費税分を不正に得る事案が多発しています。
ゴールドを輸入する場合、空港で消費税10%を支払わないといけません。購入した国(例:中国)で消費税を払っていたとした場合でもです。内緒で持ち込むと脱税になってしまいます。
業者はこれに巻き込まれたくありません。取引先から買ったゴールドが非課税だったということを知らずにいるだけで、犯罪(脱税)の手助けをしてしまう形になるからです。そして、税務上のペナルティを受けます。業者も多額の追徴課税を課されるリスクがあるのです。
実際、2020年に、金地金買取り業者など80法人・個人に40億円追徴課税されたという事例があります。このうち過半数を占める約24億円は、都内の地金買い取り会社、甘露商事に対するものでした。同社は売却者の身分証明書のコピーを保存していました。しかし、税務調査において「帳簿の記載に裏付けがない(取引相手が実在しない)」と判断されました。その結果、仕入税額控除が否認され、過少申告加算税を含む重い追徴課税を受けたのです。
さらに、偽造インゴットの国際的な流通も海外インゴット購入抑制要因の1つです。金と比重が近いタングステン等を芯に用いた精巧な偽造品が流通しています。そのため、業者側には高度な真贋判定を要する検査コストが突きつけられています。
タングステン製は従来の比重計では本物と見分けることができないばかりか、通常のX線検査では表面しか透過できないため、内部の偽造までは見抜けないからです。このため、製品を傷つけずに内部を確実に見抜く特殊な装置が必要なのです。
こうしたことから、海外製を排除する動きが強まっているようです。海外製のインゴットは国内での売却が難しくなっているということです。
ただし、国内での売却が全くできなくなったのかというのと、それは違います。日本で先物取引されているゴールドの中には海外製が多数存在します。これは正規に流通しているものですから、違法性は全くありません。先物市場から購入する(現引きする)場合、消費税を支払います。この際の取引明細があれば、売却に問題はありません。
ここまでの話をまとめれば、「違法な動きは増えている。しかし、海外製もしっかり流通している」というのが現状です。
業者の廃業で売れなくなるのか?
入手元が廃業した場合、所持している地金はどうすればよいのか。裏技があります。日本マテリアルなどに持ち込み、分割精錬します。この際に日本マテリアルは新しい自社の刻印を押します。海外製が「国産インゴット」に変わります。

ただし、大きな前提があります。「正規の購入証明書(インボイスや、領収書)の原本」が手元に残っていることです。日本マテリアルでは書類のないインゴットの分割精練は行いません。他社も同様です。
取引明細がなくても最終手段がある
では、証明書等を持っていない場合はどうすればいいのか。
金のスクラップとして売却します。スクラップとは、非公認ブランド・変形しているなどの理由で正規のインゴットとして認められない金を指します。いわば、「傷物の訳あり品」として買い取られます。
2026年6月15日時点での田中貴金属では、店頭買取価格が24,196円に対し、スクラップ価格は22,700円と、約1,500円の損失です。1㎏で150万円の損失ではありますが、売れないよりは格段に良いでしょう。
要約すると、購入した取引業者で売却するのが大前提です。自分が売ったものを引き取らない業者はありません。その際に、過去の取引明細書の提示を求められますが、地金に刻印番号がある場合が多く、最悪はそれで確認してもらえることが多いようです。
最終的には、ゴールドが本物でありさえすれば、安心です。そこにゴールドの本質的な魅力があるのです。



コメント
コメント一覧 (3件)
ゴールドの情報有り難うございます。
とても助かっております。
高齢83才なので、息子57才に、譲渡したいのですが(500g)何処へ行けば良いのでしょうか?
貴金属店さんに、売らずに、譲渡だけしておきたいのですが可能でしょうか?
突然死などで、亡くなった場合は、どうなるのか、ご教示頂ければ、嬉しいです。
売らずに譲渡することはできますが、そうした方がいいかどうかは慎重にお考えになってください。
まずは譲渡する場合は、「本当に息子さんの手元に渡す」ということが大事です。
たとえば不動産なら「登記」があって、誰が持ち主なのかがわかるようになっていますが、金地金にはそれがありません。
「誰が買ったか」は購入店で記録されているはずですが、「今誰が持っているか」は客観的に記録する方法が無いですよね。
そこでお子さんなどに譲る際は、贈与契約書を作って、そして契約通りに実際に地金を息子さんのお手元に渡すようにし、「名実ともに」譲り渡すことが必要です。
たとえばあなた名義の貸金庫などに預けてあって、そこに預けたままで契約だけ結んだとしても、実際には「譲渡されていない」とみなされる可能性がありますからね。
ただし譲渡は可能とはいえ、色々と注意点もあります。
年間110万円以上の贈与を行うと、受け取った息子さんが贈与税を支払うことになります。その分の現金も考慮してあげる必要があるかもしれません。贈与税を払わない代わりに将来の相続税で精算するような制度もありますが、それも受け取った息子さんが制度を知って色々と手続きすることが必要です。
もし突然お亡くなりになってしまった場合には、一応はお持ちの金は勝手に売られてしまうことはなく、そのままあなたの相続人となる方に引き継がれます。もし旦那さんがいたりお子さんが複数いたら、一定の割合で分け合うことになりますが、それが500gの金塊1つだと実際には分けられないといったことが起きます。遺言がない場合、どうするかはお子さんたちが協議して決めることになるでしょう。
このあたりはまだお伝えしきれていない、複雑な要素が色々とあります。さらに詳しいことをお聞きになりたいようでしたら、メールやLINEでぜひお尋ねになってくださいね。
日本の税関係で納得できる説明に出会ったことがないが呑み込むしかない、国を出るまでは。