政府370兆円投資の未来はバラ色か?

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2026年6月30日

金庫は空っぽ、見栄えは満タン

政府が370兆円超の大型投資を行うと大々的に発表しました。この景気の良いニュースを聞いて、「日本もついに本気を出した!」と喜んでしまうのは危険です。政府の投資計画がいかにいい加減であるか、その実態をお話しします。

まずは、この370兆円という数字のカラクリです。図表1と図表2をご覧ください。

投資期間は2026年度から2040年度までの約15年間です。つまり、370兆円を15年で割ると、1年あたりの投資額は約24.6兆円になります。さらにズルいのは、これが官民合計だということです。民間企業(例えば日立など)が勝手に行う予定の設備投資の数字までかき集めて、見栄えを良くしているに過ぎません。

民間の投資額は各社が毎年行っているものですから、「日本の設備投資総額が今年はOO兆円になる」と発表しているのと全く同じです。

政府の投資額はGDPの押し上げ要因になります。しかし、財源は全く不透明です。政治の世界では消費税減税(食品1%)などの政策について、まず、その財源をどうするかが議論されている状態です。そもそも国にお金がないのですこうした状態で新規国債を発行すれば、金利が跳ね上がってしまいます

お役所ファンドは信用できない

一般的に言って、政府の投資は成功しないと考えるべきです。資金提供を受ける側に、「自分のお金ではない」という甘えがあるからです。しかも、役人は、「とにかく予算を配り切ればいい」という態度です。

本気度の感じられないお役所仕事の典型が、図表3のクールジャパン機構です。

日本の魅力を世界へ発信するために設立され、計83件、2040億円もの投資を決定しました。しかし、現実には投資先の業績不振も響き、2024年度の累積赤字は383億円でした。2025年度には累積赤字が540億円に膨れ上がっています。

赤字を426億円以内に抑えるという当初の目標すら達成できない悲惨な状況です。経済産業省が廃止や他のファンドとの統廃合に向けた検討に入るという、大失敗の結末を迎えています。成功しない最大の理由はひとつ。何が儲かるプロジェクトかを見極めることのできる目利きがいないことです

役人は事業を興した経験がないですから、目利きのある人が政府内にいるはずはありません。同じ失敗が起きると考えるべきです。失敗だらけの投資計画によって、日本が成長路線を歩むと考えることはできません。

損切りできないゾンビ製造ファンド

さらに恐ろしいのが、一度始めた支援を途中でやめられないという政府特有の病です。図表4をご覧ください。

その象徴が、株式会社ジャパンディスプレイ(JDI)です。ソニー、東芝、日立の事業を統合し、2011年に合意、2012年に日の丸液晶メーカーとして鳴り物入りで設立されました。しかし、海外メーカーとの価格競争に敗れ、長年にわたり赤字を垂れ流しました。

民間企業であれば、即座に撤退(損切り)するような絶望的な状況です。それでも政府は「国策会社を潰すわけにはいかない」と、追加支援(追い貸し)を繰り返しました。2016年の750億円を皮切りに、2018年に200億円、2019年に1500億円規模と、巨額の資金を注ぎ込んだのです。これまでつぎ込んだお金を諦めきれません。責任問題になることを恐れて税金を投入し続ける、最悪のパターンです。

国策テーマには近づかない

市場の厳しい競争にさらされていない政府主導のプロジェクトは、ムダな経費を増大させます。そして責任逃れの延命治療を続け、最終的に国民の負担へと跳ね返ってきます。

これまで、どれほど景気の良い金額や成長戦略が発表されても、お役所仕事の事業が頓挫してきた実態を見てください。国策テーマに踊らされないことが大事です

コメント

コメント一覧 (6件)

  • これまで高市政権の掲げる「戦略17分野」に注目してきましたが、本記事で視点が180度変わりました。
    民間企業なら即座に事業撤退となる局面でも、「国策」という盾があることで、責任逃れの延命治療が始まってしまう。
    その構造的欠陥が、クールジャパン機構やJDIの具体例から非常によく理解できました。
    「国策に売りなし」と言われますが、盲信は禁物だと痛感しました。

    ありがとうございました。

  • 今回も先生の視点での 真実が明らかにされて、世の情報がいかに粉飾された物
    で有るかが良く分かりました!
    これから直ぐに自身で同じ様な分析が
    出来る様に成るとは思えませんが、
    「これって本当か?」の視点でニュースを観る視点を持ち続けたく思います。
    ありがとうございました。

  • 日本の未来を考えると、人口の減少、老齢化、そして労働力人口の減少な地が迫っています。
    しかも、GDPの減少から脱却する日本再生の戦略について、国民的合意はまだ形成されていない。
    これが最大の危機的要因ではないだろうか。
    私は、高石内閣の17部門の戦略的再生戦略と長期的な戦略的財政計画に賛成です。単年度会計予算制度
    は財政政策自体閉塞的で「赤字財政の慢性化要因」になっています、国の予算と民間企業の戦略的設備投資計画の一体的な日本再生戦略が始まろうとしています、国家予算だけでら本再生はできない。
    その視点から日本の未来を作る事業に貢献していくべきです、国の政治と国民を対立するものとして見る思想はもう古いのではないか。川本

  • 現在の日本の先行株は①レーザーテックを主とする半導体②三菱重工を始めとする防衛産業③フジクラを始めとするAIデータセンター関連そして④浜松ホトニクスを始めとする光半導体・粒子関連が上げられそれぞれに対して大きなお金の投入が考えられていますが、日本が単独で出来る事は限られていると考えられるが、どの様に海外と連携をとると言う話が一つも読めなかったという事は、まだ模索中という事でしょうか?これでは、円高介入の捨て銭のp大型版になりそぷですがどの様に考えて投資をすれば良いかご教授下さい

    • あなたがお察しの通りで、政府は「出資する」ことやその先を決めたまでです。もちろん出資を受けて、企業側ができることは多少増えるでしょうけども、その先で事業がうまく行くかどうかは政府が左右できる話ではありません。ただ「この分野に政府として力を入れています」というポーズを取ることはできます。ポーズは取るがその影響力はごく限られる、その点も為替介入とよく似ています。

      政府が巨額投資をするなら、その分野や企業はこれからも順調だろうと考えてしまうのは早計であり、今は株よりもゴールドがいいという方針に変わりはありません。

  • 国の政策の見方や世の中の動きには裏があり、盲信せずに先ず、何故このような政策が出て来るのか、と一旦止まった考えることの重要性に気付かされました。ひとつ一つ学ばせていただきます。林先生、コメントしてくださった方々に感謝申し上げます。

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