金利差拡大に投資家の不安が現れている
5月21日NYダウは800ドルを超える下落となりました。
この真相について今日はお話しします。
テレビなどでの解説では、「長期金利(10年債)が4.6%へと上昇した」といったことを挙げています。
しかし、これだけでは十分な解説になっていません。
大事なのは、超長期金利と長期金利の金利差が広がってきたことにあります。
超長期金利とは30年債を指します。
30年後に償還される国債金利のことです。
長期金利とは10年債を指します。
10年後に償還される国債金利のことです。
図表1にあるように、超長期金利(青)は1月中旬につけた高値に戻っていますが、
長期金利(赤)はそこまでは戻っていません。

このため、両者の差が広がっています。
この金利差の拡大は何を意味しているのか。
それは常識を働かせて考えてみればわかります。
債券投資家にとって一番大事なことは、「元本がちゃんと戻ってくるのか」ということです。
一般に、期間が長くなればなるほど、不確定な要素が増えてきます。
その意味で、1年債より5年債、5年債より10年債、10年債より30年債の方が、金利が高いのは当たり前です。
(金利が高いということは、債券価格が安いということであり、それだけ債券に対する需要が小さいということです。)
最近の金利差拡大の意味は、簡単に言うと、
「10年後に政府が国債を償還できると思っていても、30年後には無理かもしれない」
と考える投資家の数が増えてきたということになります。
つまり、30年後の償還に対しての不安が膨らみ始めたということです。
全く同じことは、ITバブル期に株価が下落し始めた頃の状況に似ています。図表2です。

S&P500(青)と30年債/10年債の金利差(赤)で記しました。
これを見ると、株価が天井をつけて、下がり始める時期に金利差が0.0%から0.4%へと上昇していることがわかります。黄色でシャドーをかけた箇所です。
また、図表3のリーマンショック時においても、
金利差が0.1%から0.4%へと広がった時期(黄色のシャドー期)に、株価の暴落が始まっています。

最近の金利差と株価の状況を示したのが図表4です。

金利差が0.2%から0.5%に上がる過程において、S&P500が大幅に下落したことがわかります。
今後、株価の下落は債券投資家が主導していくことになるでしょう。
30年債の金利上昇は注目すべき指標のひとつです。
コメント
コメント一覧 (4件)
素人の私には、
> 今後、株価の下落は債券投資家が主導していくことに
従来この観点は、全くありませんでした。
林先生に教わったことの一つです。
金利差が0.2%から0.5%に上がる過程において、S&P500が大幅に下落したことがわかります。しかし株価が6000まで戻っているのはなぜですか?金利差はそれほど下がってません。
金利差と株価の関係は、長期的なものです。
つまり、金利差が広がったからすぐに株価が暴落するということではありません。
また、0.5%まで広がったから、株価の暴落が始まる(終わる)といったこともありません。
2つの間に、緩やかな相関関係があるという見方をしてください。
今金利差が広がっているのにs&p500が下げ渋っているのはお金を沢山供給しているからでしょうか?