2025年12月9日
構造的な問題がある
本日は「オプション取引の現実」についてお話しします。
オプション取引は、一見すると、少額から大きな利益を狙える魅力的な金融商品です。しかし実際には、多くの個人投資家が損失で終わっています。その理由をデータや事例を交えてわかりやすく解説します。
データが示す損失率の高さ
- インド市場:証券監督当局(SEBI)のデータでは、2024‐25年度に91%の個人投資家が損失を計上。
- 米国若年層:Bloomberg調査では、短期的な利益を狙った若い投資家の70%以上が損失。
- 台湾市場:学術研究によると、80%以上のデイトレーダーが赤字で終わり、利益を出せるのはわずか2割未満。
オプションの仕組みが損の原因
どうしてこのように損が出ているのか。それはオプションの商品設計そのものに問題があるからです。損失を生みやすい性質だということです。
オプションとは、株や為替などの原資産を「将来の期日までにあらかじめ決められた価格で売買できる権利」を取引する金融商品です。
実例を挙げましょう。日経平均コールオプションです。(コールとは英語では「上がる」といった意味に近い言葉です。)
9月限(2025年9月11日取引最終日)のオプションは次のようになっています。
図1
2025年9月3日終値 42,500円行使のオプション
日経平均(先物) 42,630円
コールオプション 395円
2025年9月4日終値
日経平均(先物) 42,910円(前日比280円高)
コールオプション 530円
ここで注目すべきは価格の動きです。42,500円で権利を行使できるコールオプションの価格が395円から530円に上がったことです。値上がり幅は135円です。「日経平均の値上がり幅280円より小さいのではないか」と思う人がいるかもしれません。その通りですが、オプションに投資する人は前日に395円を投資して、翌日530円を得られたのですから、1日で34%のリターンとなっています。
ここでは証拠金は要りません。ただの395円が530円になるのです。ただし、最低の運用資金(通常は30万円以上)が必要ですから、口座に395円あれば取引できるというわけにはいきません。
先物取引と比較しましょう。先物を買った人は42,630円から42,910円に値上がりしたに過ぎません。値上がり幅は0.7%です。その上、証拠金が必要です。
このように、オプションは値上がり幅の大きさに多くの個人投資家が魅了されてしまうのです。
損失の本質は「時間の経過とともに期待感が減っていく」こと
賢い投資家はこう考えるでしょう。「1日で大きく儲かることとはわかった。でも逆になれば大きく損をしてしまうことも事実だ」ここまでは全くの事実です。でも、ここまでの話ならば、信用取引のようなレバレッジ(倍率)の高い商品全てにいえることです。
賢い投資家は、さらにこのように考えを進めるでしょう。「日経平均が日々上がるか下がるかは、ほぼ五分五分だ。だとしたら、投資家の損失率が50%程度にならないとおかしいのではないか」
現実は約8割の損失が生じているようです。なぜここまで多くの投資家が損をしてしまうのでしょうか?
理由は時間にあります。保有期間とも言い換えることもできます。ここで9月に取引終了日を迎えるオプションと10月に迎えるオプションの価格を比較してみましょう。
図2
9月4日終値 42,500円行使のオプション
9月限(9月11日取引最終日) 530円
10月限(10月9日取引最終日) 915円
同じ42,500円で権利を行使できるオプションが、期間が約1か月長くなると、価格が大きく上がっていることに注目してください。逆に言えば、1か月間に価格が大きく下がっているという事実が重要です。
仮に、ここから毎日日経平均の価格(例:42,600円)が変わらないとします。そのため、9月最終取引日、10月最終取引日の双方の日経平均先物価格も42,600円ということになります。
すると、このオプションは最終日の最後の価格は
42600円-42500円=100円
となります。当然のことですが、上で述べた話は全くの仮定であり、本当のところは将来の価格は誰も知ることはできません。投資家たちは「日経平均がどんどん上がる可能性はあるだろう」と思います。だから、100円以上の価格をつけます。
しかし、9月最終取引日が近づくにつれて、日経平均先物価格は42,600円に近づいていきます。投資家は、「あと数日で、日経平均が大きく上がるはずはないだろう」と思うようになります。
ただし、1か月後の10月取引最終日の話となれば別です。「1か月あるのだからまだまだ上がるかもしれない」と大きなプレミアムをつけます。
この話からわかるように、取引最終日までの日数が短くなってくると、投資家は現実的になって、日経平均の大幅高を夢見なくなっていきます。それで、オプション価格が下がるのです。それが910円から530円の価格の違いに現れています。図2が示すように、期間の長いオプションは短いオプションに比べて相当価格が高いです。
簡単に言えば、オプションは月日の経過とともに価格が下がる商品です。この現象を英語ではTIME DECAY(時間が経つと腐るもの)と呼びます。
こうしたことからオプション取引には慎重になった方がいいでしょう。ジム・ロジャーズはコロンビア大学での講義の中で、オプションについて質問をした学生に、「お金を失ういい方法だ」と答えていました。アメリカ人らしい皮肉っぽい言い方でした。



コメント
コメント一覧 (6件)
まさに手が出せない代表がオプション、
時間というのは投資に関して非常に重要な要素だとわかるご説明ですね。
日経225先物で大きな損失しそうなときに、付け焼刃でしたがオプションで損失が少しだけですが減らすことができた経験がありました。
米国では多くの方がオプション取引されていて、オプション取引は株の保険ともいわれているとのことなのでちゃんと勉強したいと思っていました。
林先生のご説明は大変納得いきました。オプションについて、また詳しく教えて頂きたいと思います。
ありがとうございます。いつも、勉強になります。
勉強になります、、
オプション取引は上昇、下落の両方で利益を出せるのでやったほうが良いと勧められましたが、林先生の「多くの個人投資家が損失で終わっている」という話は参考になりました。