トランプのディール

  • URLをコピーしました!

2025年7月2日

お金欲しさがすべての根源

トランプ大統領の政策には非常識に近いものがあるのを皆さんも感じていませんか?

この理由は何なのか?

今日はこの解説をします。

ぼくが感じている不合理な政策の代表例は次の2つです。

➊米国学生ビザの面接延期
米国は学生ビザの取得に必要な面接の予約受付を停止しました。

これはビザ発給停止と同じ意味です。

米国の最先端の技術は海外からの人材が担っています。

世界の最優秀な頭脳が米国に集まり、競争し合う環境があります。

野球の大リーグを例に取ればわかりやすいです。

日本で優秀な選手は米国でプレイしたいでしょう。

技術系の人たちも同じです。

このため、米国では博士課程の留学生の多くに対して、奨学金を発給する制度があります。

ビジネススクールのような修士課程の外国人学生は対象になっていません。

あくまで、博士課程のみです。

将来米国の最先端産業の発展に役立ちそうな人材に資金援助を行うためです。

ビザが停止されれば、米国を訪れる若手の研究者の数が激減し、ひいては、研究レベルの低下につながります。

❷カナダからの麻薬流入対策
トランプ大統領は2025年2月、中国、メキシコ、カナダからの輸入品に対し

追加で関税を課す政策を打ち出しました。

合成麻薬フェンタニルを防ぐのが目的という触れ込みでした。

フェンタニルはモルヒネの50〜100倍もの強力な鎮痛効果を持つ合成オピオイドで、

依存性は極めて高いとされています。

2024年、メキシコとの国境では約9,525㎏が押収されましたが、

カナダとの国境では19.5㎏の押収に過ぎませんでした。

北部国境からの押収量は南部国境からの押収量の0.2%です。

トランプの本音
政策が不合理であるということは、ぼくが指摘するまでもなく、誰もが感じることです。

もちろん、大統領自身も理解しています。

つまり、目的は別のところにあり、本音ではないということです。

本音は関税です。米国の国庫は大赤字で、破たん状態にあります。

そのためには、お金をできるだけ吸い取らなくてはなりません。

図表1にあるように、米国への留学生を送り出している第二位は中国です。

中国にも、「留学生を復活させてやるから、関税を出せ」という作戦です。

実際、中国との関税交渉の結果、中国人留学生へのビザ発給停止は解除されました。

カナダへは、「フェンタニルの件は忘れてやるから、関税を出せ」と脅しているのです。

カナダは今のところ応じていません。

そのカナダに対して、「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」と繰り返し述べています。

カナダ首相の前でも公然と同じ主張を展開しました。

「51番目の州」というのは庶民間で広く言われているジョークで、カナダ人も納得して笑って応じています。

しかし、常識的に考えて、それを公式の場で持ち出すことができないのは明らかでしょう。

米国に有利な条件でカナダが関税を払うと決まった時、

「51番目の州は間違いの発言だった。カナダは素晴らしい隣人だ」と言い出すに決まっています。

一般に、国家はこうした手口を用いません。

これはヤクザのような品のない世界で行われているディール(取引)です。

しかし、破たん状態の米国はそんなことを言っている余裕がないのです。

最近の米国が打ち出す多くの政策は、「最初は大胆、後になって現実的」となっています。

その過程で相手国がお金(関税)を払うことに同意するからです。

トランプの努力の結果、関税収入は大幅に上がっています。

最後に、以下のような統計数値を示しておきます。
関税収入4月163億ドル(2.4兆円)
前月の3月88億ドル、1年前の4月の71億ドルから大幅増
米国の連邦政府の赤字額 2024年会計年度
1.8兆ドル (270兆円)

コメント

コメント一覧 (5件)

  • これでは米国の経済は立ち直るかも知れませんが関税をかけられた国はボロボロになるんじゃないでしょうか…。
    米国の株価は上がっても日本の株価は下がると言うことにはならないのでしょうか?

    • トランプが関税政策を行う理由は国庫にお金がなく、どんな手段を使ってでもいいから、財政を立て直したいという意志の表れです。
      簡単に言えば、最後の悪あがきをしていると言えます。

      歴史上、関税を上げることで立て直った国はありません。
      株価への影響度で言えば、米国により悪い影響があると考えるべきです。

  • いつもお世話になります。
    トランプ砲が功を奏して、関税収入が増加し続け米国の国庫が潤うとすると、まだまだNYダウは下がらないということになるのでしょうか?

  • ・・・「関税」という名の「みかじめ料」な訳ですね。
    アメリカの対外政策の醜悪さを世界の誰にでも分かるように「見える化」したと言う意味で、「トランプさん!あんたはエライ!!」
    ( ̄▽ ̄)

  • 昨日の日経ニュースに、米ドル 隠れ債務 が1.4京円 BISが警鐘 金融危機の火種に、、、と云う記事がありました。これは、どう云う事を指摘しているのでしょうか? 今日は、この辺りの事では、何らの記事も無いので、一般的には何の問題も無い、とやり過ごされているのでしょうか?

野尻 茂雄 へ返信する コメントをキャンセル

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次
閉じる