2025年6月16日
先進国景気の悪化が背景
今日は中東情勢の緊迫化を巡って、今後の株価の行方についてぼくの見解を述べます。
今後、NYダウや日経平均、欧州の株価平均は下落に向かうでしょう。6月13日に始まった、イスラエルによるイラン攻撃が契機となります。
一般的に、「中東情勢が緊迫すると原油価格が高騰する」と言われています。それが物価の上昇を招き、景気を悪化させ、株式市場に悪影響をもたらします。今後は、こうした経験則通りに株価下落の方向を歩んでいくでしょう。
数ヶ月以内には4月7日に打った底値37,000ドルを抜いて、さらに下がっていくものと思います。
要旨は以上です。
ここからは、興味のある人のために、中東情勢と株価の関係についてさらに詳しくご説明します。
複雑な話になるので、皆様の混乱を招かないように要旨には書き加えませんでした。簡潔に言うと、「上で述べたような中東情勢の緊迫化が常に株価にマイナスの影響を与えるのではない」ということです。今回の事態は株価下落につながりますが、そうでないケースもあると言う話です。
湾岸戦争を事例に挙げます。
図表1を見ると、湾岸戦争が開始された1990年8月2日から株価が大きく下げているのがわかります。

そして、図表2に原油価格を見ると、2か月程度の間に23ドル台だった原油は40ドルにまで上昇しています。

これは世間の経験則に沿った動きです。今回も同じように、株価は大きく下げていくでしょう。
しかし、これと全く違ったことが起きることも珍しくありません。
イラク戦争がいい事例です。2003年3月20日の開始です。図表3に、ダウ平均の動きを見ると、戦争開始後に大きく上がっているのがわかります。

図表4には、戦争開始後、原油価格がその後横ばいに推移していることがわかります。

湾岸戦争とイラク戦争では、株価や原油の動きが全く違うのです。
これはなぜなのか。
簡単に言えば、株価や原油は中東情勢を中心に動いているのではないからです。もう少し大きな観点で見る必要があるのです。
図表5には、ダウ平均の1980年からの動きを記しています。

湾岸戦争で株価が大きく下がる前の数年間に注目してください。大きな上昇期を経験しています。景気が良く企業収益が拡大中だったのです。
1990年に入り、景気がピークを打ち、それが原因で株価が下がったというのが真相です。戦争開始は株価下落のきっかけになったに過ぎません。
また、イラク戦争は、IT暴落で株価が4割超下げた後に起きました。IT暴落、不景気からの回復のために、米国は戦争を必要としていたのです。景気浮揚策です。狙いが見事あたり、景気は回復基調になり、株価は底入れしました。図表6です。

このように見てわかることは、中東紛争によって株価が上下するのではなく、それは経済の流れを加速するきっかけに過ぎないということです。
では、現在の経済の流れとは何なのか。それは、リーマンショック後の2009年に始まった米国好景気が終焉に達したということです。中東情勢の緊迫化によって、これが加速されるでしょう。
日本の株価は米国と同じように動くので、下落の道を歩むことになります。皆様は株式の買いポジションを持たないようにしてください。空売りをする場合は、ルール(資産の2割まで、8%上昇したら損切り)を守ってください。
なお、この「今日の気づき」は本日同時に配信した投資部LIVE動画版の要約です。
コメント
コメント一覧 (5件)
>中東紛争によって株価が上下するのではな
く、それは経済の流れを加速するきっかけに過ぎないということです。
このご指摘は、地上波のニュースを見ているだけでは、気づきませんね。
そうだったのかー。(^◇^;)
そう言えば、1980年頃にありましたよね。
イスラエルによるイラク原子炉爆撃事件
(バビロン作戦)
出来事は、過去と繋がっているんですね。
・・・歴史は、冷徹な皮肉屋ですね。( ̄▽ ̄)
あっ、言葉足らずでした、あの時は
イスラエル空軍によるイラク攻撃、今度の対象はイランなので、そこは違ってましたね。
只、イスラエルの自国の危険要因は断固取り除くと言う鉄の意志は、変わらずですね。
最も今回は、メタニヤフさんの自分都合で仕掛けた攻撃と言うトンデモ噺しではありますが。。。_φ( ̄ー ̄ )
林先生の、 モノの見方が素晴らしく
視野が広がります。
毎日の気づきが、本当に楽しみです。
これからも、伝授、ご指導の程
どうぞ よろしくお願い致します。
あるコラムより。
皆様のご参考になるでしょうか?
コラム イランとイスラエルから
第三次世界大戦になるのか?
最近、イスラエルがイラン本土を攻撃し
それに応戦したイランが
イスラエル本土にミサイルを撃ち込み
ニュースになっています。
イスラエルの防空システムは
世界最高レベルに強力なのに
イランが撃ち込んだミサイルが
大量すぎたため
いくつか着弾したようです。
さて、この後、全面戦争になるとか
第三次大戦につながると
心配する人もいますが
そうはならないでしょう。
これはなぜかというと
イスラエルとイランは
軍事力の差がありすぎ、
なおかつイランを支援する国も
無さそうだからであります。
まず、イスラエルの軍事兵器は
世界最先端の物ばかりなのに対し
イランは旧式ばかりです。
また、予算も
イスラエルは潤沢なのに対し
イランは経済が不調すぎて
お金がありません。
さらに、イスラム諸国は通常
同じイスラム教徒を
助けるものなのですが、
イランは宗派と人種が違うので
ちょっと距離があります。
イランはシーア派なのですが
ほとんどの国はスンニ派で
イランはペルシャ人なのですが
ほとんどの国はアラブ人なのです。
中国やロシアやトルコも
歴史的にはイランと
友好関係でありますが
イスラエルと敵対したくないというのが
最近の本音だと思われます。
そして何より
こうなってしまう一番の理由は
イランの現イスラム政権が
崩壊してしまいそうだからです。
イランでは、ここ5年くらい
経済が急速に悪化して
平均賃金がドル建てで
8割位ダウンしていました。
そして、各地で反政府や
反イスラムのデモが起きていましたが
政府は弾圧して、あるデモでは
200人以上が殺されました。
その陣頭指揮をとっていたのが
次期最高指導者といわれていた
ライシ大統領で
国民からは恨まれていました。
このライシ大統領が
昨年5月に墜落死したのですが
追悼されるのではなく
首都テヘランの街の各地で
祝杯の花火が上がるほどでした。
私は昨年5月、墜落事故前に
テヘランに行きましたが
イランから脱出したくて
言い寄ってくる女性多数で
モスクには高齢の男性しかいなくて
ビックリしました。
イスラム政権離れだけではなく
イスラム教離れまで進んでいて
イラン革命前の西欧式社会に
戻りたい人が多いのです。
現地で聞いたところによると
「この40年間イスラム教を信じ続けて
来たけれど、裏切られてばかりだった。
だからもう信じられない」という人が
かなり多くなってしまったようです。
そんなわけで
現イラン政権は一応は抵抗しつつも
勝ち目ないことはわかっていますので
落としどころを探りに行く感じですね。
また、イスラエルも
このことをよくわかっているため
軍事関連施設だけを攻撃し
現政府の要人を狙って殺していますね。
イスラエルとしては
イラン国民を敵に回す気はなく
むしろ感謝されたい感じでしょう。
イランがイスラム政権のまま存続するか
革命が起きて、西欧化するかは
まだわからないところですが
イスラエルが労せず圧勝することは
間違いなさそうです。
そして、第五次中東戦争や
第三次世界大戦にはならないでしょう。