~見えないところにあるリスク~
VIXの空売りについての相談が増えています。
今日はこれについて解説いたします。
「お薦めしない」というのが結論です。
4月4日、VIXは45.30ドルの高値をつけて引けました。図表1です。
図表1

「ここから下げることになれば、かなり儲かるのではないか」という問い合わせが相当数に達しています。
この考え方を裏付けるのが図表2です。
図表2

2016年以降、45.30を上回ったのは4回しかありません。
そのうち3回は1ヶ月以内に低い位置に戻っています。
(3回は月足のヒゲの部分が45.30以上になっています。
月足のヒゲということは、月の終りには45.30を下回っていることになります。)
つまり、上昇期間は長くないことがわかります。
例外は2020年のコロナ危機で、この場合3ヶ月以上にわたって、45.30以上の数値が続いています。
V I Xの空売りを考える人は、
「4回のうち3回は儲かっているのだから、この機会を逃すことはない」と考えています。
45.30で空売りし、仮に10ドル下の35.30ドルで買い戻すことができた場合、10ドルの儲けになります。IG証券を用いれば、レバレッジは1000倍になりますから1万ドル(150万円)利益が得られます。
しかし、この考え方には、落とし穴があります。それを示したのが図表3です。
図表3

2008年のリーマン・ショックの際はVIXが90ドルまで進んでしまいました。
仮に45ドルで90まで保持しているとすると、大変な評価損が生じてしまいます。
「だったら、損切りをすればいいのではないか」というのが賢い投資家の姿勢です。
「損切りを4~5ドル上に設定しておけばいい」と考えるでしょう。
それなら、「リターンとリスクの差が大きく、割に合うトレードだ」と考えるかもしれません。
しかし、ここに問題があります。
図表3の最高値の日(2008年10月23日:「最高90まで上昇」と書かれた日)に注目してください。
この日は、高値が96.40安値が51.83でした。
つまり、1日の中で45ドル動いたことになります。
VIXはこのように、価格が上昇するにつれ、1日の中での値動きが大きいのです。
仮に45.30で空売りを行い、5ドル上に損切りポイントを置いたとしましょう。
翌日の終値が、30ドル台に下がっていたとしても、日中に5ドル程度の上昇があることは珍しくありません。
その場合は損切りが発生してしまうことになります。
損切りは通常ストップ注文にしますから、「50.30ドルになったら、成行で買い」という注文が執行されます。
値段が大きく動く日には、損切り価格から5~10ドルも高く買い戻すことになってしまうかもしれません。
これではリスクが大きすぎるのではないでしょうか?
期待できそうな利益に目を奪われて、リスクを忘れないようにしていただきたいと思います。
コメント
コメント一覧 (5件)
「VIX指数11ドルで買い」の結論に至る裏側で、緻密なリスク回避の理論がある。
と言う事ですね。なるほどです。
・・・最も、今回のコラムを理解出来るまでには、小生の修行は及んでいません。(^◇^;)
・・・メモメモと。
VIXの件ではないですが
本日4月14日に純金信託はプラスでした
為替は円高、NY金は安いので
日本も安くなる筈でしたが意外でした。
トランプ関税の最中、株価が乱高下している状況で空売りをしてはと考え林先生に質問したのですが、下手な考え休むに似たり。
経験も無くリスクも考えず浅はかな自分が恥ずかしいです。
でも学びは始まったばかりです。
林先生、詳細な解説をありがとうございます。
VIXCFDではなく、VIX短期先物指数ETF (318A)の売りならどうでしょうか。
日中に乱高下があっても、中期では下落の可能性が高いことら、損切り設定なしで、しばらく放置というのはどうでしょうか。
板が薄いので大きな利益にはなりにくいですが…
資金の問題もありますが、VIXの空売りは かなりハードルが高い気がします。
過去の学習経験には無い内容なので、引き続き勉強するとして「お薦めしない」に従います。
まだまだ 見えないリスクを感じてしまいますね。