関税は気づきにくい生活コスト

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数量制限も物価高騰につながる
今日は関税・輸入制限について語ります。私たちが案外気づいていない生活上のコストです。

まず写真1を見てください。これが、バンコクのスーパーマーケットのバター売り場です。ぼくがこっそり撮りました。何か気づくことがありますか。海外生活をした人ならわかるのですが、これらのバターは輸入品です。タイ国内産は少ないです。これは日本のスーパーではあまり見られない光景です。日本のごく庶民的なスーパーを覗くと、日本製がほとんどだからです。

なぜこのような違いが起きのるか。それは日本の輸入数量制限のためです。日本のバター国内生産量は約7.5万トンです。これに対して輸入制限量は1万トンとなっています。両方を足すと、8.5万トンですから輸入品の割合は12%となります。つまり、私たちがスーパーの売り場を見た場合に、外国製は12%しかないということになります。
国際競争はとても厳しいです。バターに限らずあらゆる商品について言えることですが、品質と価格の点で卓越したものを選んだ場合、国産よりも海外産が圧倒的に多くなるでしょう。それは単に海外産の方が多いからです。例えば、海外産のものが国産の100倍の種類があったとしたら、単純な計算では、優秀な国産商品は100種類に1種類しかないことになります。

国産の99種類は優秀ではないので、値引きして売るしかなくなります。これでは国内産のものは劣勢に立たされてしまいます。そこで関税や輸入数量制限を設けるのです。こうして、日本ではバターの価格が諸外国に比べて高止まりすることになります
さて、ここで実際の価格を見てみましょう。日本で最も有名な海外産バターといえば、エシレです。フランス産の最高級のバターで、一流のフランス料理店で使われているものです。2008年日本でバター不足が起こった時のことです。このエシレも不足気味となり、あるフランス料理店のマネージャーは、「バター不足になってから、パンにたっぷりとエシレを塗るお客様が増えています」とこぼしていたことがありました。写真2が実物の写真で、250グラム入りです。

価格の比較は以下の通りです。
日本: 3400円
タイ: 2200円
シンガポール 2060円

日本とタイではほぼ同様の約3割の輸入関税がかかっています。それでも、タイがかなり割安なのは、輸入制限がないからです。シンガポールでは関税もゼロですから、さらに価格が低くなっています。

なお、この写真を撮った日はエシレの特売日で、価格は1100円でした。写真1の2段目の左から2番目にしっかり写っています。日本ではエシレが特売になることはありません。

私たち日本人は、「日本の農業の保護育成のために、関税・輸入制限は当然の措置だ」という政府の見解を鵜のみにし過ぎていないでしょうか?私たちがそのために、高いコストを払っているということに気づいていないのではないでしょうか。

コメント

コメント一覧 (6件)

  • 今まで関税を特に意識していませんでした。ただ牛乳にしても、余っているのであればどうして、バター等乳製品に加工して利益を求めないのかと思って、日本は無駄がおおいなと!

    • 既得権益を持っている人たちはなかなか手放さないものです。
      そうした人たちのために、私たち庶民の生活が苦しくなっています。

  • 関税や輸入制限は日本の農業を守る為 と
    又、既得権益も10年20年間と期限があるのかと思っていました。
    私達にはどうする事も出来ないので
    これからますます生活を見直し
    経済について、先生から色々な
    事を学ばせて頂きたいと思います。

    • 税金はごく短期的に税収不足を補う目的で始まったとしても、
      それが長く続く事があります。
      例えば、相続税がいい例です。
      これは日露戦争が始まった際に戦費調達の手段として戦争の時だけ
      相続税を徴収する、というものでした。
      それから100年以上この税金が続いています。

  • 相続税に縁がなかったので真剣に考えたことがありませんでした。
    麻生さんが『さんざん税金を払ってきたのに死んでまで税金を払わせるのか!』と言われたことを聞いて、なるほどそういうことになるのか!と納得しました。日本政府は税金を取ることしか考えていません。
    国民を豊かにすることを考える政府を望みます。

    • アラブ首長国連邦に住んで分かったのですが、
      その国には住所がありません。
      だから、東京都千代田区一番町1の1の1といった記述はなく
      例えば僕が住むのは〇〇ビルですとか〇〇ショッピングセンターの隣のビルの
      3階の四号室にいます。
      とか言った言い方をします。
      なぜかというと、税金がないからです。
      所得税もないし、住民税もないし、不動産に関わる税金もないんです。
      政府はその人がどこに住むかということを把握する必要がありません。
      だから住所がないわけです。
      つまり住所というのは、私たちから税金を取るための
      手段だということがわかるでしょう。

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