ファンドによる買収の裏側

ファンドの実態はハゲタカとは違う

アメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」が常磐興産買収発表しました。ＴＯＢ株式公開買い付けによる完全子会社化です。当社の株価は発表を受けて４割程度上昇しました。

本日お話ししたいのは、「投資ファンドとは何か」です。何故、投資ファンドが買収すると経営が向上するのか。

ファンドについて悪い印象を持っている人たちは少なくありません。次のような印象です。

ファンドは買収した企業をいくつかに切り分けて、売れそうなものは他社に売却し、売れそうもない事業は潰して、徹底した効率化を図っていく。血も涙もないハゲタカのような存在だ

こんな感じでファンドを見ているのです。

これはほぼ間違った捉（とら）え方だと言えます。

何故か？企業を切り分けたところで、企業価値が上がるということはありません。そんなことが簡単にできるならば、買収される前に、日本企業が自ら試しているはずです。

財務的な手法を用いて会社を改善するには限界があります。投資ファンドが魔術のような手法を有しているわけではないのです。

話を進める前に、買収をめぐるネット記事をまとめてみましょう。

常磐興産は福島県を代表する観光施設スパリゾートハワイアンズを運営しています。1966年にいわき市に開業したスパリゾートハワイアンズは施設の老朽化が進んでいました。しかも、新型コロナウイルスの感染拡大により財政状況が悪化し始めていました。改善をするには、多額の設備投資が必要と想定されていましたが、その見通しが立っていませんでした。

これを一言で言い表すとどうなるか？

常磐興産は経営が下手だったから、経営のうまい会社に身売りした

となります。

身近な例で言いましょう。

近所の和菓子屋は先代の頃、客足が遠のき店が傾き始めていたが、息子の代になり新商品を投入して人気店となった

といった話を聞いたことがありませんか？

アメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」が目指しているのは、この息子のように人気事業にすることです。ハワイアンズをお客様が多数来場する施設に変身させることです。

簡単に言えば、この投資ファンドにはリゾート経営に長けた敏腕経営者がいるということです。ドン・キホーテやニトリ、ソフトバンク、ファーストリテイリングといった会社は創業者が健在で、その力によって企業業績を向上させてきました。同じようなレベルの経営者がフォートレス・インベストメント・グループにいるわけです。

このファンド傘下にはマイステイズ・ホテル・グループがあります。現在、１５１棟、１９，８１４室を有しています。APAが５１６棟、６７，５４９室ですから、かなり大きな規模のホテルチェーンになっていることがわかります。常磐興産もこのマイステイズのグループ企業の一員になるわけです。 マイステイズ・ホテルが成功していることからわかるように、常磐興産の買収も成功する確率が高いでしょう。その裏は、財務トリックではなく、敏腕経営者の存在があります。