2026年2月19日
デマの正体は各国の税金
銀先物価格が100ドル(1オンス当たり)を超えた1月29日、「中国やインドで銀価格が120ドルや150ドルを超えている。これは世界的な価格急騰の前触れだ」といったSNS情報が拡散されました。
こうしたデマに騙されないようにしましょう。今日はこの話を解き明かします。
まず、常識で考えてみてください。NYで100ドルの商品があり、中国やインドで120ドル、150ドルで取引されているならば、多くの人はNYで買って中国・インドで売るでしょう。瞬時に20ドルまたは50ドルの利益を手にできるからです。誰もが同じことをしますから、買い手の多いNYでの価格はだんだんと値上がりし、売り手の多い中国・インド価格は値下がりします。
数秒後には両地域での価格は同じになるはずです。金融市場において、そんな「うまい手」は存在しません。
ではどうして価格が違うのか。単なる税金と手数料の積み上げです。
中国での市場価格を押し上げる13%の消費税
図表1を見てください。最初の行は1月15日時点の上海先物取引所のデータです。現地の価格は1kgあたり約22,650元。これをオンスやドルに換算すると約101.5ドルになります。

では、なぜ中国で120ドルという話が出るのでしょうか。その答えは、図表1にあるように、中国の税制にあります。 これが120ドルの正体です。
中国では、銀の地金を購入する際に13%の増値税(VAT)が課せられます。日本で言う消費税です。先物価格が101.5ドルだとしても、そこに13%の税金が乗るだけで自動的に114.7ドルになります。さらに販売店の利益(プレミアム)を5ドル程度乗せれば、あっという間に120ドルに達します。
インドの150ドルは「ブランド料」
インドの150ドルにも同様に消費税や販売店の利益が含まれています。140〜160ドルといった極端な高値の正体は、図表2のような高級銀貨です。

インドで人気のバンヤンツリー銀貨などは、贈答用や宗教的な意味合いを持つブランド品です。ここには多額の加工賃とブランド料が上乗せされ、1オンスあたり159ドルにもなっています。
これを銀相場と呼ぶのは、ティファニー製の銀アクセサリーを見て「銀価格が暴騰している」と言うのと同じことです。
SNSではデマが多いです。価格が上がってくると、乗せられてしまいます。冷静な対応が必要です。



コメント
コメント一覧 (2件)
この記事は不正確ではないでしょうか?
1月29日時点の上海先物取引所の銀先物価格(終値)は、30,891元/kg(=138.25ドル/オンス)でしたので、「中国で銀価格が120ドルを超えている」という情報は29日時点で正しいです。
https://www.shfe.com.cn/eng/reports/StatisticalData/DailyData/?query_params=dailystock
(検索方法:カレンダーから1/29を選択、Silver、Daily Expressを選択。下記のBai氏のポストでも確認可能)
https://x.com/oriental_ghost/status/2016778472052646346?s=20
そもそも、図表1は1月15日時点のデータなので、比較対象として不適切かと思います。
下記のサイトには、上海とロンドンの銀スポット価格が比較して示されています。
https://goldsilver.ai/metal-prices/shanghai-silver-price
これから分かるように、1月後半には10-20%の価格差が慢性的に発生していました。林さんが仰るような裁定取引(西側で安く銀を買って、中国で高く売る)は、現実には機能していませんでした。それは、「今年1月から始まった中国の輸出入規制」、「銀を運搬するコストと時間の問題」から説明がつきます。
SNSにデマが溢れていることは日常茶飯事ですが、「西側に対する上海の銀価格のプレミアムは、昨年夏頃まではせいぜい6%だったが、今年の1月には20%にも上ったこと」は、デマではなく事実だと思います。
林さんに個別に質問をし、お返事をいただきました。「29日の上海での銀価格は130ドル台で間違いない」とのことでした。また、「SGEやSHFEが表示している銀取引価格には、増値税13%が含まれているので注意して下さい」とのことです。
お忙しい中コメントいただきありがとうございました。