金の果実が上がり過ぎた

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2025年10月7日

長期保有者はそのまま持続が方針


金の果実(1540純金上場信託)の価格が、米国金先物価格に比べて、
一時10%以上割高となりました。今日はこれについて考察します。

金は国際商品ですから、日本の価格と米国の価格とが一致しているのが普通です。事実、金の果実の上場(2010年7月)来の価格を見ると、米国との日々の価格差は平均で0.2%しかありません。

理論的には0.0%のはずですが、米国の価格を午前2時ごろ計測し、日本の価格を午前9時に計測している関係で若干の違いが出てしまいます。全く同じ時間に計測したら、差異はもっと小さいでしょう。

こうした経緯とは裏腹に、2025年10月1日には、10.2%という大幅な乖離が生じました。これは何を意味するのか。

簡単に言えば、金の果実に対する需要が甚だしく大きいということです。

日本国内に上場している金ETFの中で、金の果実だけが地金への転換を行うため信用度が圧倒的に高く、東京証券取引所内でのマーケットシェアも群を抜いています。

こうしたことから、金価格が大きく上がり始めると、金の果実に対する需要が高まり、米国金価格との乖離が大きくなることがあります。

それを表したのが図表1です。

赤線は、金価格を表しています。金価格の動きをわかりやすくするため対数グラフを用いています。青い棒線は乖離率です。これを見ると、価格が大きく上昇したのちに乖離率が高まっていることがわかります。

期間を伸ばして見てみましょう。

図表2です。

2010年7月以来の乖離率です。価格乖離が発生した後に、金価格の上昇が一休みすることが多いようです。

サヤ取りで儲ける

通常は大きな乖離が生じない理由は、乖離率の拡大時にサヤ取りが行われるからです。

乖離が大きい時点では314Aを買って1540を売り、乖離が縮小した時点でそれぞれのポジションを元に戻せば利益が残るということです。

具体的に話しましょう。

10月1日 乖離率10.2%

1540売り 価格(始値) 18,985

314A買い 価格(始値) 272.3

10月3日 乖離率 4.4%

1540買い 価格(始値) 18,000

314A売り 価格(始値) 270.0

という取引を行います。

1540は金のグラム数が0.937グラムであり、314Aは0.0147グラムです。

つまり、1540の方が314Aの63.74倍の重さがあります。

機関投資家は1:63.74という比率で正確に売り買いするのですが、ここでは誰でもできるように、

1540 10口の売り

314A 640口の買い

を行なうとします。(理論的には637.4グラムを買います)

その場合、

1540で生じる損益

(18985-18000) X10=9850円

314Aで生じる損益

(270.0-272.3) X 640=―1472円

となります。これらを合計すると、

9850-1472=8378円

となります。

このサヤ取りに要する資金は19万円(=18950円の10倍)の約2倍、つまり、38万円弱です。38万円を投資して、短期間に8378円(利回り2.2%)を稼ぐことができます。

この利益は乖離率が10.2%から4.4%に下がった時点で行ったもので、乖離率の縮小を長く待てば利益幅はさらに拡大します。

なお、サヤ取りはこうした実情に詳しい方のみにお薦めする方法です。

一般の方は買ったものを普通に持続するのが最善です。

乖離が広がった理由

このサヤ取りはリスクの比較的小さな取引で、しかも、短期間に収益をあげることができるという点が魅力的です。

従って、多くの個人や機関投資家が行うことになります。また、1540の信用倍率は13倍以上あるので逆日歩になってしまうリスクもありません。

では、普通では発生しない、このようなサヤ取りの機会が何故発生したのか。それは1540の買い需要があまりに大きくなったからに違いありません。金は上昇基調にあるのだから買いを急げ。こうした思いの投資家が多かったのです。

10月1日の時点で金の果実を買ったのが間違いだったのか、または、金の果実をいったん売却した方が良かったのか、という問いが数多く届きました。

図表2を見ると、そうした小手先のテクニックは間違いだということがわかるでしょう。金価格は短期的には下落局面があったものの、上昇が継続的に続いてきたからです。

1540の乖離率が激しい際に、サヤ取りは行わずに、代替として乖離率の低い314Aを買うという方法も存在します。乖離率が収まった時点で、1540にスイッチします。つまり、ある時点で314Aを売ると同時に1540を買うわけです。

こうした方法が煩わしいと感じる人は、通常通り1540を買っても、何ら問題がありません。

金価格は長期的には3倍から4倍に上昇すると考えられるからです。しかも、自分が売ろうとする時期には金の果実への需要が先週のように高まっているでしょうから、大きな乖離の中で手放すことができるかもしれません。

コメント

コメント一覧 (5件)

  • 10月2日に買って高値買いだったんだなぁ
    乖離というらしいけど注意が出てたらしい。
    どこに出てますか?
    知識無いとこうなるのですね!

  • ・・・1540も空売りするのですね。
    そんな発想がありませんでした。
    勉強になります。m(_ _)m

  • 10/8 19,400に年高になってました。
    10/1に18,850で高値と知らず、初めて買いました。株の値動きより、安心なので、持ち株を売ってこちらを買いました。
    投資部に入ったからこそ、これに出会えたと思います。

  • サヤとりしてみようと思い、本日1540売ろうしましたが、売り禁止になってました。

  • 乖離というのがあるを知らずに10月初めに1540を3口も買った。
    知識無い初心者だしNISA枠でしてる。
    まだまだ上がるから保持してたら良いということなので保持します。
    金の投資家が多くなってていずれも乖離してるので
    今後は乖離率の低い方で買付けしていきます。

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