米露首脳会談:本質を見抜く

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2025年8月14日

首脳の発言は無視が最善

今日は、国際政治を見る上で、最も重要な視点についてお話します。

一言で言えば、政治家の発言を一切信用しないことです。

もう少し詳しく述べましょう。
政治家の発言を信用しないとするならば、何を信用するのか。それは政治家の行動(事実)です。具体的に話を進めます。米露首脳会談が8月15日にアラスカで開かれることになりました。

米国大統領は、「8月8日までにロシアがウクライナ戦争の停戦を行うか、それに近い提案を行わなければ重大な制裁を科す」と述べてきました。

しかし、8日を過ぎても、制裁は課されませんでした。

15日に設定された首脳会議では、ウクライナ戦争については話すものの、「停戦に関する合意は行われないだろう」との見通しをホワイトハウス報道官が述べています。

それでは、米国大統領は、この会談後に、「停戦が実現しなかったので、従来の主張通り、重大な制裁を科す」と言うでしょうか?

それはありえません。両首脳が共同で記者会見を行い、会議の成果を強調するはずです。そうした成果を強調する傍らで、制裁を科すことはできないのです。

つまり、これまで言ってきた制裁というのは、“真っ赤な嘘”だったということがわかるでしょう。

これまでのトランプ発言を振りかえってみましょう。
●2月28日、トランプ大統領はウクライナに対し、「アメリカがいなければあなたに一切のカードはない。態度を改めなければならない」と発言し、米国の支援を背景にウクライナの姿勢転換を促す立場を示した。

●5月25日、ロシアがウクライナに夜間攻撃を行ったことを受け、プーチン大統領について、「何があったと言うんだ。彼はたくさんの人を殺している」と強い批判を展開。ここではロシアの行動を非難し、ウクライナ支援の正当性を示唆。

●6月16日、「ロシアをG8から除外したのは間違いであった」と発言し、過去の国際的制裁措置を再評価する姿勢を見せ、ロシア寄りと受け取られるメッセージを発した。

●7月7日、「もっと武器を送るつもりだ。ウクライナは自衛の能力を持たなければならない」と述べ、再びウクライナの防衛力強化を支持する発言に転じた。

どちらの味方なのか全くわからないでしょう。発言は信じない方がいいのです。

大事なことは、行動、事実です。具体的に言うならば、「アラスカで会議が開かれる」ということです。日本をはじめ、各国の首脳は、ワシントンにあるホワイトハウスに参上しています。これに対して米国大統領がわざわざアラスカまで行くのですから、極めて重要な会議であることは間違いありません。

しかも自国の従属国ではなく、宗主国の元首を招くのですから、これは「賓客」として扱うことになるわけです。

つまり、ロシアは賓客なのです。この会議の設定のために、米国の特使がロシアを先週訪問しています。ロシアが米国を訪問しているわけではありません。ここからわかるように、へりくだっているのは米国の方です。

この会議では何が中心の議題となるのか。それは特使の性質を見ればわかります。特使はロシア担当であると同時に、中東担当でもあります。通常は2か所の地域をひとりの人間が担当することはありません。ここから推察するに、ロシアとの共通の議題(最大の議題)は中東情勢だということです。

この件については、おそらく会見後の記者発表記事では、公表されないでしょう。イスラエルや欧州などの立場が微妙に関わることだからです。

今日のぼくの国際情勢の見方に触れて、皆さんはどのように思ったでしょうか?

今日ぼくがお示しした見方は、全て、「誰がどこで何をした」ということだけに基づいて語っています。こうした事実に基づいた見方をすることが本質を見抜く最短の道であることをご理解ください。

コメント

コメント一覧 (14件)

  • 8月15日のアラスカでの米ロ首脳会談の代表団は、下記のとおり。
    アメリカの代表団:
    – ドナルド・トランプ大統領
    – バンス副大統領
    – マルコ・ルビオ国務長官
    – スコット・ベッセント財務長官
    – スティーブ・ウィトコフ特使←ロシア、中東問題担当

    ロシア代表
    – プーチン大統領
    – アンドレイ・ベローゾフ国防相
    – セルゲイ・ラブロフ外相
    – アントン・シルアノフ財務大臣
    – ユーリ・ウシャコフ大統領補佐官
    – ドミトリエフ大統領特使

    林先生の言われるように、ガザ問題のアジェンダが隠されてますが、
    私は気になるのが、ベッセント財務長官の参加です。ウクライナ侵攻の際に凍結したロシアの外貨の返還も議題になるのでしょうか!
    他に、何か隠してるかもです。

    同盟国からは関税を取れるだけ取りながら、敵対国には、、
      

    • 石岡 様
       お久しぶりです。久しぶりに興味深いコメントを拝見させて頂きまして誠にありがとうございました。とても参考になりました。
       私は、トランプ氏は同盟国内の戦争継続を希望する勢力を敵視していると考えております。戦争を止めるためには、プ-チン氏やロシアは味方と考えているのではないでしょうか?
       御指摘の通りバイデン政権の時に凍結されたロシアの米国債建ての数十兆ドルもの資産の返還もあるかもしれません。いかがでしょうか?

  • > 今日ぼくがお示しした見方は、全て、「誰がどこで何をした」ということだけに基づいて語っています。

    本質的には林先生の仰る「固有名詞」を外して考えるということですね。しかも、「お招き」するわけですね。
    一般的な報道と随分印象が違いますね。
    国際的なプロの情報筋は、同様な見方をしていると考えていいのでしょうか?
    (もっとも、米国の情報筋は真逆の見解でしょうが。。。( ̄▽ ̄))

  • ありがとうございます。
    先生の考察力は素晴らしいです。
    何が真実なのかが分かって来ました!

  • ありがとうございます。今度はモスクワにへりくだっていくのですね?
    プーチンに何か取引をしたいのでしょう。経済的な

  • 8月14日付の林先生解説は、まるで今日16日のTV映像を見た後のような正確無比なものでした。二時間以上の会談後の記者会見では、初めにプーチンが笑顔で8分の演説、次にトランプが苦虫を噛んだような顔で3分の演説!?ならぬ報告? 米国大統領演説が2番目は前代未聞とか、、、。    おじゃまむし

  • 人間は多面性を持った生き物なので、
    アメリカ側の意図としては
    ノーベル平和賞
    北極圏の安全保障(今回の会談の目先の意図)
    なのかもしれないと言う印象、

    ロシア側の意図が情報がなさすぎてわからん。

    いずれにしても自分たちの利益だけしか話題に出せなかった中身すっからかん
    まあそれでも緊張を誘発する物ではなかった
    と言う印象を受けました。

  • 匿名というニックネームで投稿した者です。
    先生の文章だけを読んで、と言うよりは、先生の文章を読んだ上で
    さらに、発表会見も見た上で、の印象です。

    ノーベル平和賞が欲しい(ウクライナはその一つの項目に過ぎない)
    のと
    アメリカの北極圏の安全保障

    が焦点にされてたような印象

    なんだか、もともとロシア領のものがクリミア戦争でアメリカに売却された領土があるというのも初めて知り、グリーンランドやカナダの売買話も決して空想でもなくて不動産売買でのしあがった『トランプさんにとっては』現実感を持った話なのかも?とも思えました。
    ロシアは日本に対してもつい最近大地震のあった不法占拠してるところもあるし、
    力による支配をしたがる人は迷惑だな、と個人的に思いました。

  • 訳の解らないトランプ。信用もない。まして過去ロシアは第二次世界大戦で条約を結んでいたにもかかわらず、日本が戦争を辞めた8月15日に天皇が認め、発表してから、北海道に
    攻めて来て樺太など占領してしまった。日本人も沢山殺し今80年経っても樺太に日本人の墓あり、先祖の為、
    墓参りに行く。昔も今も、まったく信用出来ないロシア。北朝鮮、韓国も慰安婦問題、国と国の約束で日本が多額,資金払ったのに別の代金に使ってしまった。周りが信用出来ない国ばかり。何時でも日本を狙ってる。アメリカが軍事基地あるから。撤退したら、それ行けーとロシア、北朝鮮、中国が無力の日本攻めて来る。日本人は平和ボケして魂を抜き取られたから。戦争を知らない人増えて、子供を産む人も居なくなっている。年寄りばかり、周りの国々のカッコウの餌食になりつつある。でも魂を抜き取られたから仕方ない。日本人は居なくなり、ロシア、中国、アメリカ、北朝鮮に分断されてしまう。密かに中国人が京都のお寺、北海道の美味しい土地、東京の一等地に多額のマンションをいくつも持っている、日本人か。イヤ中国人が日本語をしゃべる日本人に家族、親戚一同で化けているだけ。密かに周りは中国人に占領されている。戦争無き占領だ。

  • 会談は林先生がおっしゃる通りになりました。
    トランプの本心がわかりました。
    米国の最大の関心ごとは中国の封じ込めだと言われています。
    中露の二国がタッグ組めばアメリカとて脅威となり中露の分断が必要。
    米国は対中のため日本を重視し日本に軍備増強を強制?しています。
    中国は日米分断政策を画策。米国は中露分断するため露国を取り込むため
    ウクライナを犠牲?にして停戦でなく和平にまで話しを進めているのだと思います。
    中国は先の大戦での日本軍の「南京大虐殺事件」「731部隊の中国人捕虜の人体実験」の映画を放映しつつあります。これで反日の騒動が起こるでしょう。日米分断政策に反する行為をなぜ今やるのか??です。
    米国はウクライナはEUに任せて自国ファーストに専念すると思います。

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