バブルの傷跡は想像以上に深い

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今なおSBI新生銀行に残る傷

1月28日、SBI新生銀行は2026年3月期中に公的資金1000億円を返済する方針を発表しました。今日はこのニュースを解説します。
解説のポイントは、「日本のバブル崩壊が如何に大きなものだったか」という点にあります。
これから株価の大きな暴落が来るでしょう。
その際の後始末も長い時間がかかることになると予想されます。それを予感させるニュースです。
新生銀行とは「新しく生まれた銀行」という意味ですから、もともとは古い銀行でした。
日本長期信用銀行(長銀)という名前でした。1990年代以前には、三井、三菱、住友といった都市銀行のほかに、3つの長期信用銀行が存在していました。
預金の受入れに代えて債券を発行することで資金を集め、設備資金又は長期運転資金の貸付けを行っていました。
融資の期間が長めのせいか、積極的な方針を取り、1980年代には不動産業に果敢に貸し出しを伸ばしていました。

景気後退期にはそれが裏目に出ます。1990年にバブルが崩壊し、長期信用銀行の業績は急速に悪化しました。
長銀は1998年10月に経営破たんし、国有化されました。

7兆円近い公的資金を資本金と借り入れとして受け入れ、2000年3月に新銀行として再生し、6月には新生銀行と名前を変更しました。
その後、2021年12月にSBIホールィングスの子会社となり、22年1月に名称を現在のSBI新生銀行に変更しました。

SBI新生銀行の抱える公的資金は現在約3300億円あります。
自己資金から500億円を返済し、親会社から500億円を調達することで、合計1000億円を返済する計画です。

残りの2300億円についても2026年3月期中には目途をつけたいと語っています。
このニュースでわかることは、バブルの爪痕がいかに深く刻まれ、残っているかです。バブル崩壊から数えれば、35年になります。
まだ公的資金が返しきれないのです。

なお、長期信用銀行は3行ありました。最小だった日債銀(日本債券信用銀行)は1998年12月に破たんしました。長銀の2か月後でした。

3つの中で規模が最も大きかった興銀(日本興業銀行)は破たんを免れましたが、2000年に富士銀行と第一勧業銀行との3行合併に参加しました。
実質は興銀の救済でした。

合併銀行では通常は、経営トップは合併前の銀行出身者が順番でなるのですが、
興銀出身者は2011年まで社長就任が果たせませんでした。社内で負け組とのレッテルを貼られていたからでしょう。

ぼくが学生だった1980年代では、長期信用銀行3行の人気(就職ランキング)は極めて高かったです。三菱銀行や住友銀行以上でした。
当時は興長銀という言い方がされ、この2つが最難関でした。学歴レッテルの高い、優の数の多い学生だけの就職先でした。
しかし、そうした人たちに優秀な会社経営ができるわけではありません。

1997~8年の日本の金融危機において経営破たんした大手銀行は長期信用銀行2行だったのです。それ以外は、公的資金を受け入れながらも、業界内で銀行同士の合併を行い、何とか生き残りました。つまり、最もずさんな経営を行ったのは、最も学歴の高い人たちだったと言えます。
その経営のひどさが今なお尾を引いています。

コメント

コメント一覧 (10件)

  • 長銀のはたんはよく覚えています。
    銀行もつぶれるのかと衝撃でした。
    詳細は知らなかったですが、今回具体的な公的資金の大きさや35年経って今なお続いている現実に本当に驚きました。
    この先の暴落も同じ様に長期化するのでしょうか、心配ですが知ることできて幸いです。

    • これから起きる金融危機においては、銀行の破綻件数や、それが回復するまでの時間の長さは、さらに大きなものになるでしょう。

  • 私が会社員していた頃には存在していた銀行でした。銀行の合併がその後続いたように思い出しました。興銀、その後の新生銀行、若かったせいか興味がなかったです。

  • 新生銀行は、ATM手数料が無料で、振込手数料もステージ毎に月3〜5回無料だし、定期預金の利率が高めの設定なので、未だに私はメインバンクに使っています。

    どのくらい国債を保有しているか分からなかったので、心もとなく感じながら利用していましたが…公的資金の返済額が3300億円となると、いよいよ債券カバー率の高いセブン銀行やオリックス銀行などへのネット銀行への乗り換えを進めようと思います。

    大暴落が始まれば、SBI証券への影響も期になりますね。

  • 私の地元栃木県、足利銀行が経営破綻しました。
    そのせいで、鬼怒川温泉のホテルの多くが潰れ
    ゴルフ場も、外資などに安く買い叩かれました。
    栃木県の経済にも影響を与えました。
    このようなことが起こる可能性があるのですね

  • 経営とは能力とは何だろう、学力とは異なるもの?
    優秀な成績で卒業しただけではだめだとはわかるが?

  • 農林中金の莫大な損失のため、理事長が交代します。米国債の利率の上昇による債券の評価損を確定するので、損失を計上するみたいです。
    他の地方銀行や生保なども、これから、同様の処理をしたら、相当数の地銀が破綻してしまい、地方経済が崩壊してしまいます。

    個人的には、これからの金融危機でゴールドの高騰で、少しは潤いますが、地元が廃れていくとなると、複雑な気持ちです。

    • 農林中金の損失処理が他の金融機関にも広がれば、地方経済への影響は避けられませんね。

  • カリキュラムに『米経済崩壊直前』とかトランプ大統領が関税など無茶振りは米経済お尻に火が? 日本への影響はモロですね 更にバブルの傷痕が未だにとは(意外でした)①証券会社も(野村、三菱UFj,SBI証券)どこが安全ですか? ②以上の事からも先生のおっしゃる通り素人は先ず金ですか?③ネットでは(マスコミは親中、韓国で嘘ばかり?)中国は破綻寸前とか カリキュラムでは米、欧州が中国やBRICSに頭を下げる時流? やはり中国BRICSは健在ですか?

    • 日本のネット証券は、おおむね安全です。
      旧来の大手証券は国債の保有率が高いため、取引しない方が賢明です。

      金は不確実な時代において、資産保全として最善の選択肢です。
      中国を中心とするBRICSは、米国経済の衰退とともにその力をますます増していくでしょう。

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