今日は「米国政府には裏帳簿が存在するのではないか」という話をします。
政府は企業(特に上場企業)に対して明朗会計をするように指導しています。損益計算書、キャッシュフロー、貸借対照表といった様々な資料を取引所に開示するように取り決めています。
では、自分たちが率先して同じことを実行しているかというと、それは違います。政府が国民に開示しているのは、歳出・歳入の表くらいです。これは企業の損益計算書に近いです。政府には損益がないので歳入(売上に近い)と歳出(コストに近い)を公開しているわけです。
キャッシュフローや貸借対照表に近いものは公開していません。つまり、秘密主義なのです。
一般に、提出する書類が多いほど裏帳簿は作りにくくなります。各種の会計表の整合性が取れなくなってしまう恐れがあるからです。これに対して、政府は歳入と歳出のみを開示しているので、裏帳簿の作成は比較的容易でしょう。
裏帳簿が存在していそうな形跡が、米国政府発表資料から読み取れます。それが図表1です。

これは毎年の財政赤字と債券発行額(純増額)を示したものです。例えば、この図表の最終年度にあたる2023年度(9月末決算)においては、米国債は2.6兆ドル増加しました。(表にはないですが、前年度の31.4兆ドルから34.0兆ドルに増加しました。差額が2.6兆ドルです。)
一方、2023年度の財政赤字は1.7兆ドルでした。両者の差は差し引き0.9兆ドルとなります。
理論的には、財政赤字は債券の発行で補うことになります。ですから、この二つの金額は毎年大体同じになることが予想されます。にもかかわらず、0.9兆ドルの差が出ています。1ドルを150円換算すると、135兆円の大きさです。日本の国家予算より大きな金額差が出ているのは何故なのか?
こうした差額が図表上に現れているのは2023年だけではありません。長年にわたって、青い棒線で示した債券発行額が赤い棒線で示した財政赤字額より多いです。
図表2はこの差額をよりわかりやすくするために、債券発行額から財政赤字額を引いた金額を示したものです。

これを見れば明らかなように、コロナ後の2021年を除いては、プラスの年度が圧倒的に多く、金額の大きさは近年ほど大きくなっているようです。
ここまで大きな差額が毎年のように続くのは何故か。歳出のある部分を隠して財政赤字額を過少に公表していると言えないでしょうか?
個人には、人には言えないような支出があることがあります。同じように政府にもあるのでしょう。米国の場合ならば、海外の政府や地域を不安定な状態にするために多額の費用を支出しているかもしれません。
たとえば、イスラエルとパレスチナの戦争においても、パレスチナ側に資金援助を行っている可能性は大いにあります。それでないと、資金難にあえぐパレスチナが早めに白旗を上げ、戦争終結となってしまうからです。
また、隠された歳出の中には、政治家やその利益団体に対する寄付などが含まれているのかもしれません。
内緒の歳出は国を亡ぼすことがあります。2009年のギリシャがその例です。国家の財政赤字額が従来の公表額4%は嘘で、本当は13%もあったことを白状してしまいました。株価が大暴落し金利は30%にまで上昇しました。
米国にもそうしたリスクがあることは頭にいれておく必要があります。
コメント
コメント一覧 (5件)
ありがとうございます。昨年から安心して米国債ETFや米国生国債(既発債)を購入していたのですが、林先生のお話を伺い、米国政府の財政データを見るにつけ、安全性にきな臭い煙が立ち込め、こ臭いと感じました。売却すべきものは早めに処理してまいります。
エマジーさん
本当の事に気づいて行動するという事はとても大事な事です。
これで1歩前に進んだ投資家になれましたね。
有難うございます。注意深く取り組んでまいります。
嘘はどうしても隠しきれないものです。
統計の端々に本当でないデータの証拠が必ず見えるものなのです。
こうした情報については、皆さんにできるだけわかりやすく紹介していきます。
有難うございます。「本当でないデータの証拠」の「み方」が少しでもわかるようになりたいと思います。できましたらご講義の中で、特に〇〇のデータを見るときは、「みなさ〰️ん、ここが嘘を見抜くポイントなんですよ!分かった?」とご指摘いただけたら嬉しいです。失礼だとは思いましたが先生の優しい口調で書いてみました。よろしくお願い致します。